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急性期とは、発病初期や再発や再発増悪期にみられる、幻覚などの激しい時期のことを言います。
この時期、当人の行動や家族への態度が急変しがらりと変わってしまうために、身近な人たちはとても驚かれます。
心配のあまり「どうしたの」と近づこうとすると、「なんでもない!」と言って、避けようとします。時には「俺の悪口言っているな」と理由のわからない反発をしてくるために「なぜこんな風に言われなくてはならないだ」と家族としても切なくなり、しばしば手をこまねいているだけになってしまうこともあります。

急性期に神経が活動しすぎて人は過覚醒になります。」

脳内のドーパミンという物質を介して働く神経が活動しすぎている状態になっているのだという仮説があります。この「過覚醒」とは神経が張りつめすぎて、かえって思うように脳が働かなくなってしまった状態を言います。「あがる」とか「舞い上がっている」という状態がもっとひどくなった様子と考えると良くわかります。こうなると頭の中はぐるぐるいろいろな考えが渦巻いているのに集中力は落ち、まとまった行動が取れなくなります。                     
                              気疲れ
                            / ↑↓ \
                   ひとり考え込む    ⇔    不安
                            \ ↓↑ /
                              不眠
この悪循環ができます。薬はこの過敏になりすぎている精神を適度な敏感さにします。この薬の適量を見つけ出すことが医師の施す治療となります。そしてこの悪循環をストップすることが助けとなります。

人間は必要な情報だけ(音や見たいもの)を頭に取り入れて、不必要な情報(音や見えるもの)をカットするフィルターを頭の中に持っていますが、そのフィルターに穴が開いて、何でも漏れて入ってきてしまう障害とも説明できます。
たとえばカラオケの騒がしいところでも、私たちは相手の言っていることがわかります。それは意識して話に集中して、他の音は頭の中のフィルターがカットして必要なことだけ聞いているからです。統合失調症の急性期状態(病気になったばかり)というのは、当人が知らないうちにこのフィルターの破れ目ができ、意思とは無関係に情報が流入してくる状態です。破れ目から何でも音が入ってきてしまうのです。自分が間違いをして、周りからいろいろ言われて、とってもうるさいときのことを思い出してください。映画を見ているとき、他の観客がうるさくしゃべって、ポップコーンを音を出して食べていて、それが気になって仕方がなかった状況を思い出してください。きっと似たような体験があるはずです。それがイライラしている姿です。
こうなると普通なら気にならない音にも急に妙に敏感になります。まわりの人のしぐさや表情もやけに気になったりします。人は自分の関心があることだけに神経が集中しますが、この病気を発症すると、あらゆることに自分の意思とは関係なく脳が集中力の機銃掃射を始めるのです。この状態は不安をかき立てられる恐ろしい体験です。私たちは人間は予期せぬときに強烈な、しかも大量の情報にさらされると、圧倒され整理がつかなくなって取り乱してしまうものなのです。仕事の失敗で突然のトラブル発生、クレーム処理情報で頭が回らなくなったり、「これは自分でなくあいつがよけいなことをしたからだ、あの変更を知らせてくれなかったからだ。あの時電話してたら」「きっと仕事を失うぞ!もうこれで終わりだ」。こんなことが起こったことがありませんでしたか?当人は「何か特別の意味があるからあの人は笑っているのじゃないか?」「何かのサインがどこからか送られているのではないか?」などと疑い深くなり、自然と否定的なことを考えてしまうのです。
そしてあなたが、その人が心をわずらっていると知らなかったら、その人を助けようと、その人の行動や言動を説明、説得して、指導して、批判し、アドバイスを与えて、何とか正しい考えに戻してあげようと、、一生懸命助けの手を差し出すでしょう。しかしそれはさらにストレスにストレスを重ねることになるのです。それはかぜひいた体に水をかけてさらに追い討ちをかけていることになります。その人は障害を抱えてしまったのです。目には見えませんが、心が熱を出して、うなっているのです。目に見えない風邪なので、サインを知らなかったら100%こんな間違いが起きます。決してあなたの失敗ではありません。起こるべく起こることです。しかし愛するのに遅すぎることはありません。きっと今これを読んでいるあなたはもしかして今、気が付いたかもしれません。それで良いのです。そしてスタートです。遅すぎることはありません。私は一年半かかりました。


正常な時はフィルターがかかって脳が自分の聞きたいことだけを選ぶ。それに穴があきすべてが同じように聞こえてきてより分けができなくなってしまう。すべての音が同じように強く聞こえてくる。これがあたまの中がうるさい状態

「閉じこもろうとすることは身を守る一つの手段です。」

このような状況では人はどうにかして情報の氾濫から身を守ろうとします。部屋に閉じこもりラジオもテレビもつけず、布団の中でじっとしているのはそのような意図の現われともいえます。また何とか事態を納得しようと理屈を考えることもあります。
このようなときは人と関わると自分が見透かされたとか、馬鹿にされていると感じるために、つっけんどんな態度を取って人を遠ざけようとします。ときには追いつめられたと感じると衝動的な行動に走ったり、興奮して怒りを表したりすることも起きてしまいます。


急性期の治療発病したときの対処法

「急性期の治療はファイルターの破れ目をふさぐのが目標です。」

第一に薬物療法がこの役目をになっています。脳神経のフィルターの穴をふさぐことで、破れ目から余計な情報が入ってくるのを防ぎます。昔の薬と今の薬は違います。近年、副作用の少ない、新薬が発見され開発されています。これは福音です。第二に過剰な情報の渦のなかで混乱し消耗している当人にしっかり休息をとってもらうことが必要です。そのために睡眠が大きな役割をしています。眠っているは間に神経細胞が修復されます。当人が「ああ、良く眠れた」と感じられる良質の睡眠が取れることが大切なのです。
第三に必用なのは当人が受けとめる情報の量を減らす工夫です。薬物療法により補強されているとはいえ、神経のフィルターはまだ破れやすい状態です。なるべく静かな環境で過ごすことが求められます。
たとえば、人ごみを避ける、テレビも楽しめないならやめる。一度の行う会話の量を少なめに。5つのことを伝えたかったら5回に分けて伝えるなど。
家に居場所が確保できて穏やかに過ごせるようにしてあげることが大切です。そうすれば家族にも当人にも自信につながります。


「心の戦士の役割」:とにかくこの時期は当事者本人が睡眠をとることがとっても大切です。「夜はゆっくり眠れた!」それを朝の挨拶に。もし「眠れた」といったらほめて、一緒に喜んであげましょう。そして「今日は気持ちが楽になった」そう聞いてあげましょう。「今日は楽になった」といったら一緒に喜んで、「良かったね、元気ついてきたね。」と賞賛してあげましょう。一杯安心の元を送ってあげてください。そしてあせらないでゆっくり構えて、怠けさせてあげてください。心にゆとりをもてるようになることが癒しの第一歩です。そのためにこっちもゆっくり構えましょう。どうしても、「良くなったら、これをさせ、あれをさせ、そしてこうなって、こうして、こうなる。」とこっちの思いで、当人のプランをたてていますが、それはもうやめましょう。自分の人生成功哲学を当てはめるのはやめましょう。そこにはまた別の幸福の人生成功哲学があるのです。そうあなたの期待したのと違う幸せの形があるのです。それを見つけましょう。そうしたら不幸はまだあなたの家の戸口をノックしていないことがわかります。
聖書に人の幸せは持ち物によらないとあります。天に宝を蓄えなさいとあります。幸せの形は違った形なのかもしれません。
あせらずゆっくり眠らせてあげること、そして「あなたを知ってるよ、心配していないよ。さあ元気になるのをゆっくり待っているからね。」・・・そう思ってあげることで天に宝を蓄えることになります。「希望は失望に終ることはない」とあります。それは神様の約束です。そしてその通りです。心の中の希望は実際形となって実現します。それが潜在的な「脳力」です。そして信仰です。多くのことを期待せず、今日起こった小さな幸せを数えてみましょう。一進一退・・根気強く、「さあ今日も生きています。」それだけでも幸せ、そう思えるように、自分なりに道を見つけましょう。
わたしは夜のニュースを見れば、いっぺんにそう思えます。さあ、戦い方は簡単です。単純なら賢いです。さあ味方や援軍は沢山います。あなたは一人ではありません。今までの失敗は忘れましょう。過去の分析はやめましょう。一つも足しになりません。今、目の前にいるその大切な人!ゆっくり眠れたら勝利です。そしてゆったり過ごせたら勝利です。そしてゆっくりでも牛の歩みでもよくなっていることは確かなのですから。

「究極の解決策「主にあって休息する」へジャンプ:関心があれば⇒


「まとめ:自分というものを治療する!?」

@統合失調症は、「自分というもの」があやふやになってしまうことが病気の本質
A薬はあくまで幻覚妄想などに対する対症療法
B理屈で考えると、「自分といういもの」を強化できれば理想的だが・・・・?積極的思考を築く
C「自分というもの」は他人との関わりの中でしっかりしていくもの!・・・その場を提供してあげる。探してみましょう!
デイケアー(治療になるので保険がききます。)、共同作業所など・・・、本人にあったストレスなく人とふれあえる場所を探してみましょう。

急性期が治まってきてもあせってはいけません。」
治療の効果が現れてくると、やがて混乱のもとっとも激しい時期は治まってきます。幻聴や妄想、興奮して暴れるなどのような病気的な体験は次第に静まり、睡眠も比較的に取れようになります。穏やかに会話ができるようになり、周囲の人も安心という気分になります。しかしまだずいぶん消耗しています。安心して自信を持って生き生きと暮らすというのにはまだほど遠い状態にあります。
「急いでは事を仕損じる」を忘れずに!
ストレスがその人が耐えられる限度を越えれば後退します。
ストレス耐性と病気の回復過程図参照⇒


急性期(発症後)の治療・養生のポイント発病直後!や再発したとき!

「なにはなくともまずは睡眠をとること」
この時期には言動が混乱したり、すぐ昂奮したりしがちです。家族としては、気持ちをわかりたくて、つい話し込んだり、言っていることの矛盾を明らかにしたく思うのも当然です。しかしさまざまな混乱は神経が働きすぎて疲れているために起きているわけで、理屈で理解できるレベルではありません。とにかく説得しようと説明や理論を語るのはやめましょう。ただ話を聞いて、安心させてあげましょう。それでも何か話さないと、本気で聞いてくれないと思い、怒ったりもしますが、気がちょっと静まるまで話を聞いてあげましょう。まだ興奮していても、激しいときが収まれば、「じゃ眠いから寝るね。」と声をかけて、先に眠りましょう。うまくいけば本人もそこでちょと落ち着き、眠れなくても自分の部屋にいてくれるでしょう。そして疲れていつか眠ってくれます。翌日は自分で起きてくるまで、寝かせてあげましょう。そしてまるで昨夜はなにもなかったかのように、「よく寝れた」と聞いてあげましょう。「眠れた」と答えたら、回復しているサインです。それでも興奮状態が続き、嵐の夜になり、朝までやっと、両方がこらえたという状態なら、病院へ行って医師の助けを求めましょう。

まずは睡眠が十分取れることを目標にして、そのための工夫を重ねます。ちょっとぼんやりできるぐらいが、具合の悪い時期にはちょうどよいようです。

「必用な量の薬を使うことが大事です。」

薬を飲むと、働きすぎていた頭にブレーキがかかって、ボーっとなったり、眠くなったり、頭がまわらないような感じになります。これは当人にとっては、一種不快な体験でもあるようです。お酒に酔っているような状態だそうです。「薬が神経を休めてくれるので、ちょっとボーっとなるかもしれないね」といってあげると、安心かもしれません。薬の副作用は当人しかわからない辛さです。それを理解してあげてください。

「休むための雰囲気づくりをしましょう。」
体の病気と違い、熱が出たり、頭が痛いなどの苦痛が見えにくく、どのように接したらよいかがわかりにくいものですが、基本は体の病気と同じです。この時期は安静を保つのがよいのです。家の雰囲気としても休むための環境を造ってあげると助けになります。
すぐ横になれるように、いつも布団をしいて、パジャマのままでもいいのです。そして音や光などの小さな刺激もさけましょう。

「説得よりも、簡潔な一言のほうが伝わりやすい。」

落着いているべきことを、理屈でもって話してわからせようとしても困難なことがあります。お互いにゆっくり落着いて話すことが難しくなっていて、説得しようとすると言い合いになってしまうこともしばしばです。伝えたいことは、簡単なことばで言いましょう。
伝えたいことがまっすぐ伝わらなくなっています。たとえ当人が落着いていて、今なら分かると思い、励ましのつもりで話し込んでも、(話している本人は励ましているわけですが、それが逆に伝わってしまうこともあります。)まずは聞く!それがこちらの姿勢です。相手の気持ちを代弁して、「あなたのこと分かっているのよ!・・・・・と考えているんだよね」と話しても統合失調症の当人には、こちらの思いの通りに伝わらないことがしばしばです。相手が落着いて聞いてくれそうだ・・・そんなときこそ油断した一瞬で、「いつも伝えたいこと、理解させたいことを今こそ言えるぞ」と思い、話してみると、当人もよく聞いて、よい会話ができたなと、思った後、当人の状態が悪化することもあります。話しができて、話を聞いて、会話が成立しても、それが頭の中で、話したすべてのことがあふれ出し、頭の中を駆け巡り、まとまりがない状態になることがあります。突然否定的なものに逆転し、それが最初のページにあったイライラと怒の不穏興奮状態を引き起こすことがあります。説得!これは誘惑です。いつか元気の秘訣を説得したい、特に若い人には励ましのつもりで、いろいろ話したくなりますが、話しすぎは禁物です。話を聞く、それに徹しましょう。そしてこちらは一言、励ましではなく、同意の態度を示し、回復は自然(神様に)任せましょう。(暴力的なことでなければ、)その場で、状況を正そうとせず、時に任せて見ましょう。時間がたてば、(薬を服用しているなら)落着いてきます。さて長くなりそうだったら、いったん切り上げて、次の機会を待つことも役立ちます。これもまた信仰です。あせらないで、状況を見るのではなく、信仰を持ちましょう。きっとすぐまたチャンスがあるさと、楽に構えてみましょう。荒い当人の声や、行動に目を向けるのではなく、そこで気にせず引いてあげると相手は楽になると、知ってあげることです。自分の近い人に知って欲しくて、突っかかってくることがあります。決して嫌いだとか敵対しているからではなく、知って欲しいがためにそのようなイライラを行動にあわらし当たってきます。(母親になど)、一番知って欲しい人、助けて欲しい人にあたってしまいます。この点もわかる必要があります。あくまでもポジティブのメガネをかけてみましょう。

「さりげなく側に静かにいることは、それだけで当人のためになります。」

子供の頃かぜをひいたとき、家の中にはいるけれど、用の無いときはとくに話しかけもせず、親は自分の仕事をしていて、そのことが聞こえてくる音によってもわかるぐらいがもっとも安心することではなかったでしょうか。さりげなく見守っていてくれることは、こういうときに役立ちます。

「当人の混乱がひどく、家族が疲れ果てたときは入院を考えましょう。」
行動や感情の変化が激しくて、一緒にいるとどうしても消耗してしまうときというのはあります。暴力のために互いに傷つけたり、傷けられたりする危険が高まってしまう場合もあるでしょう。こんなときはブレークが必要です。入院も助けになります。ただし、心を大切にする病院を見つけてください。患者さんを「ひとりの人」として尊ぶ病院を見つけてください。病院は社会と患者さんを隔離する施設ではありません。まさに休みの場です。患者さんと家族が一時休戦して、休める機会を作る場です。入院は最悪の事態ではなく、利用すべき社会資産です。安心して愛する人を受け入れてもらえる病院を探しましょう。それが「心の戦士」もう一つの役割です。


「急性期から癒える過程」:消耗期
〇消耗期はエネルギーを蓄えようとしているときです。
〇病み上がりのエネルギーの落ちている時期がしばらく続きます。
消耗した分だけ活動のために費やすエネルギーの量は落ち、脳や体の活動の鈍い時期がしばらく続きます。
〇一般に神経系の回復するスピードはとても緩やかなのが特徴です。
経験では一年で回復すればしめたもので、うまくいっても2、3年は回復の過程がゆっくりと続いていると考えていいかと思います。

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