統合失調症の長期予後予後のよい人も多いです。
長い経過の中で何度かぶり返しがおきる病気であることは否めません。統合失調症のつらさ・悔しさは「徐々に病気におかされている」というよりも「せっかく落着いたと思ったら、またぶり返してしまった。」というところにあるようなのです。そして何度かの再発は結果として当人のエネルギーを損ない、病気からの回復を遅らせがちです。再発によるダメージを最小限にするような工夫をしっかりしたいところです。そしてたとえぶり返しや、同じ症状がでたとしても、決して心配しないで下さい。心配は自分にも当人にもストレスとなります。そして慢性のストレスになり、回復の邪魔になります。これは聖書的見解ですが、信仰の姿勢を持つことです。自分の心の中にある肯定的な思いに集中し、それが実現すると知ることです。人の意思(信仰)には現実的な実現力があります。七転び八起きの姿勢です。世界のニュースを見てください。今日あなたに起こったことが世界の最悪ニュースになるでしょうか。この世には更なる悲しみ、苦しみがあります。当人はただ救いと愛を求めもがき、苦しみ、そして自分があいまいになっているのです。さあ、疲れて眠ってくれた後には、振り出しへ戻り、また消耗期、回復期のおさらいです。「人生すごろく」の考えで、望みましょう。それは必ず、「上がり」に到達します。ただサイコロを振り続けることだけです。
そしてリハビリテーションは回復率を高めます。最近のアメリカの研究では、薬物療法と適切なリハビリテーションの組み合わせで、再発の回数が減り、症状も軽快し、またほどほどに満足行く社会生活を送ることのできる人たちの比率が、ずいぶん高くなってきています。70%近くの人が症状もほとんどなくなり、充実した生活を送っているそうです。これは薬を飲むだけの治療の効果に比べると、かなり高い回復率であるといえましょう。病気の回復にあわせてこつこつとリハビリテーションを続け、やがてストレスに強くなり、生活を維持する力を身につけ、再発を防ぐ工夫が実を結んだ結果であるといえましょう。病気を抱えながらも積み重ねて行くという姿勢が、その人の人生に貢献しているわけで、希望のもてるデータです。
〇デイケアーや作業所などがあります。病院や専門の方、精神保健センターにお尋ね下さい。
参考になるドキュメンタリーです。→youtube
「行動を変えれば気持ちも変わる」
お互いに肯定的に評価するようにしましょう。(ほめましょう)
相手の振る舞いの良かったところを指摘し合うと、その振る舞いを続けるエネルギーが生まれてきます。
@目標はなるべく小さく決める。
A小さな行動の変化を目標にする。
B「何かをやめる」のではなく「何かを始めること」を目標とする。
C実際に体を動かし、声を出して練習する。
Dお互い肯定的に評価するようにする。
患者さんがひきこもる⇒家族は心配して何かと声をかける⇒神経が敏感なため、責められていると勘違いしてよけい引きこもる⇒家族はがっかりして不満や小言が増える⇒敏感さが刺激され不安定になる。
どうも統合失調症にかかると神経が過敏になりやすく容易に安心感がそこなわれるため、周囲の人とのストレスが単なる気持ちの揺さぶりにとどまらず症状の不安定さを引き起こしてしまうようです。
家族自身のストレスを和らげることが大切です。
患者さんにストレスをかけてはいけないということを大切にするあまり、心配している気持ちを無理やり抑えようとしてたり、叱りたい気持ちを無理やり抑えようとしたり、あるいは患者さんの望むことはすべてかなえてあげるといった、極端なことはしないで下さい。
大切なことは患者さんの感じるストレスも低くなり、ご家族自身も自分のストレスを上手に和らげることができるようになることが大切です。
EE尺度、コミュニケーションの工夫参照⇒
リハビリの注意
〇不足:引きこもり、回復の遅れ、症状の固定
〇適当:回復
〇過剰:再発
リハビリテーションンの4つのステップ
step1:ゆっくり休める工夫がまず基本、充分な睡眠が取れていることが必要条件。目覚めがわりとさわやかなのが理想。休息を大切にする発想は、患者さんが消耗しすぎて、元来持っている細やかな心の動きや思いやりなどの「心の産毛」を失うことを、防ぐのに役立ちます。しっかり休息した後からリハビリです。充分休養が取れて気持ちに「ゆとり」ができたら、ぼちぼち活動性を高めて行くための工夫を始めることが大切です。
step2:今まで好きだったこと、得意なことからはじめて見ましょう。
step3:馴染みの場所、馴染みの人との関わりを続けて見ましょう。徐々にエネルギーが蓄えられてくると、患者さんの関心は次第に外に向いて行きます。このようなときに大切なのは、まず自信をつけられるような居場所、仲間との関係が作れることです。自宅にくつろげる自分の居場所があることは、患者さんにとってもありがたいことです。そして自宅以外にもいくつか安心して過ごせる場所と仲間があれば、それはその後の活動を円滑に広げて行くための大切な息抜きの場所となりえます。
step4:対人関係の練習をしたり、体力をつけたりの工夫をしてみましょう。自分の居場所、仲間がいるようになれば、自然と「働きたい」「いま以上のことをしたい」という気持ちが出てくるものです。そこで自然に新しいことへのチャレンジが始まります。この回復途上の挑戦は、その後の生活をしばしば左右します。うまくいけば自信につながりますし、失敗はしばしば大きなストレスとなり、再発を招くこともあります。気をつけなければならないことは、多くの場合、患者さんも家族も、つい初めから目標を高くおきがちだということです。回復すればするほど、「こうしてはおれない」とか「いままでの遅れを取り戻そう」「これぐらいできて当然」と思いつめやすいでしょう。しかし悔しいかもしれませんが、療養生活を送っていうるうちに体力、とくに持久力はかなり落ちているものです。また、神経が過敏になった体験は、対人関係のうえで必要以上の気疲れと緊張を招くものです。まだるっこいかもしれませんが、体力作り、体慣らし、あるいは人になじむための時間といったものが必要です。そのために、デイケアや作業所、あるいは生活技能訓練(SST)というプログラムを利用することは役に立ちます。また回復の途中でおこなう仕事は、まずは練習のつもり、と割り切るぐらいがよいようです。いきなりフルタイムで働くよりも、短時間の仕事をしてみて疲れ具合を確かめる、といったところからはじめるほうが無難です。
詳しく生活技能訓練法を知る⇒
人が自発的に行動できるためには、興味をもって、かつほどほどに自分に自信をもって行動し続けることが必要であり、そのためにはかなり高いエネルギーを要します。慢性の病気を抱えた状態では、使えるエネルギーの量は限られいるわけで、それで自発的に行動するのが苦手な人が多いのでしょう。また自分で解決する力が弱っています。不安や混乱に陥ったとき突拍子も無い行動に出たり、呆然と何もできなくなってしまいます。こうしたことは実は誰にでもおきることです。ですからここで驚きや戸惑いをあらわさないで、まるでなにもなかったかのように振る舞い、そして忍耐、憐れみ、そして待つことが大切です。そして前向きな肯定的な言葉と表情、言葉でサポートしましょう。あなたの明るい反応が救いとなります。
統合失調症の性質からいって、かなり回復していても神経が過敏になりやすく、ともすれば消耗しやすい状態にあります。一見、元気そうに見えても、リラックスしにくかったり、要領良さを身に付けていないために、ついつい疲れやすく、作業を長続きさせることが難しくなります。
生活技能訓練のコツ
目標はなるべく小さく決めましょう。一回に一つ、、例えば朝知っている人にであったら挨拶するなど。
小さな行動の変化を目標にしましょう。
「何かをやめる」ではなく、「何かを始める」ことをも目標にしましょう。例えばたばこをやめようと思っているなら、「タバコを止めよう」ではなく、「タバコの代わりに何かストレス解消になるものを見つけよう」と考え、その時は散歩してガムをかむとか、肯定的な方向に持っていきましょう。また「朝寝坊を止めよう」ではなく、「朝早起きしたら何をしようか!」と考え、自分のしたいことが実現できるように工夫を重ねて行くというわけです。
▽デイケア:作業所の役割
デイケアは居場所のひとつくらいに考えましょう。デイケアは日中、患者さんに居場所を提供し、グループ活動を通じてほどよい活動性を維持しようとする場です。デイケアにはいくつかのプログラムがあって、レクリエーション活動やスポーツ、あるいは料理教室や手工芸などの作業、グループでの話し合いやSST(生活技能訓練)などの対人関係の練習の場があります。デイケアは健康保険で治療行為として認められいます。まずは居場所の一つくらいに考えて利用してくれればと思います。いくつかあるプログラムのなかから、合いそうなものを選び、その場で過ごすことで、家庭ではできない人とのふれあいや、少し根気のいる作業を維持して行うことなどができるようになります。またグループ活動ですから、みんなと話し合う機会が始終あるわけで、そうした経験は回復途上の患者さんにとって程よい対人関係の練習になります。
●作業所(小規模作業所)は社会参加への一歩となるようです。
これも通所のための場所ですが、医療機関とは別に独立して、地域で開かれているところが特徴です。行政からの補助金などを得て、家族会や患者会、NPO、就労継続支援事業所、生活支援施設、その他様々な団体が運営にあたっています。(現在は総合福祉法の元で)週5日程度の活動をしており、専属のスタッフやボランティアがメンバーとともに関わるかたちをとっています。「作業所」と名がついているのは、多くの場合が、企業などからの仕事を引き受けていて、それを行うことが活動の中心にあるからです。必ずしも仕事の練習をすることばかりが主目的でなく、仲間つくりの場であったり、とりあえずの居場所であったりもします。医療とは別の場所ですから、かえって生活の知恵は、自分達の身近な体験から身につくようです。加えて、作業をすることにより、生活習慣が身についたり、また、小額でも収入を得る充実感を得たりすることもでき、社会参加への一歩となることも多いです。それぞれの持ち味を生かして、健常者との関わりを広げる場、あるいは暮らしを豊にする場としての役割は、今後、より必要になると思われます。
生活技能訓練のページへ⇒
コミュニケーションの工夫ページへ⇒
@決してがんばりすぎない!
A大人として見てあげる。良い精神的な味方となってあげる。
B叱らない。その人の良い点に注目。叱り続けていると、その人の長所までなくなってしまう。
C前ぶれのサインは押さえる。一日眠れなくてもOK、しかし丸二日ならだめ!
幻聴の時はしからず、否定せず、やわらかく受け止めてあげる。「私には聞こえなかったけど、聞こえたの。つらいよね」と
☆人の失敗を許さない人、融通が利かない人、手抜きが出来ない人が発症しやすいです。だからこそ、その見本になりましょう。当人に対して人を許すこと、融通をきかすこと、手抜きすることの見本となり、それが当人にとってどんなに気が楽なことか体験させ、自分もそうすれば相手も楽だと体験させてください。
患者さんをかまいすぎたり干渉しすぎたりしている関係では、統合失調症の患者さんは不安になりやすいものです。そしてそのことがまたお互いの悩みの種になりがちです。
病気もなかなか手ごわい相手です。ときとして進歩はゆっくりであり、患者さんや家族の願いとは別に、思ったように回復が進まないこともおきています。そんなときにも、やけにならないで、いろいろな気持ちを抱えながらも前を向いて生きて行きたいわけです。
●おしゃべり仲間を大切にしましょう。ひとりで重荷を背負わないことです。
●主治医と良い関係を築きましょう。怖がらずに先生に問いかけてみましょう。先生も沢山の患者さんを相手に大変な仕事をしています。相談事は一回の診察で一つか二つにしましょう。そして何回かに分けて聞いてみましょう。主治医以外にも相談の場所を持つことも大切です。
養生する上で大切なこと
まとめ
〇急性期のあとには消耗期があります。
たとえ、一週間でも眠れなくなったり、幻聴がきつくなったりしたあとは、エネルギーが消耗した状態が数週間続くものです。このような状態では、眠りすぎ、根気のなさ、体のだるさ、意欲の低下などが、どうしても患者さんについてまわります。
周囲の人は「やっと落着いたと思ったら、今度は動かなくなってしまった」とやきもきします。トンネルを抜けるまでが長いので、苦労の種になるのですが、「具合が悪くなったあとは病み上がりの時期があるものだ」ということを、どうぞ覚えておいてください。これも短くなく長いことを理解しておきましょう。
〇消耗期がすぎたら、リハビリです。
「ああ、大丈夫だ」「少し自信がついた」と安心して思えるまでは、人は一見怠けているようになりがちなのです。そこで少し体を慣らしながら「これもやれ、あれもやれた」という体験を積んで行くことが大事な時期です。このような準備作業をリハビリテーションと言います。
〇リハビリ中でも寝ている時間は大切にしましょう。
消耗期がすぎた頃にはちょっと頑張ることも必要ですが、このときに睡眠時間を確保することは引き続き大切です。午前中から無理に働こうとするのでなく、お昼過ぎから何かできるようにまず工夫するのです。ともすると家族の生活のリズムと違うリズムになりがちなので、ここも苦労があります。必要な過程と割り切ってください。
〇スタートダッシュはあまり速くないほうがよい
新しいことをはじめるときは、「最初は、周りの人にあまり期待されないぐらいがちょうどよく、健康なときの半分もできれば上出来」と思えばいいのです。
〇三日眠れなかったら要注意です。
再発は誰でもいやなことですが、前ぶれのサインをつかむと、何かとダメージを最小限に抑えることができます。わりと共通しているのが、眠れなくなることで、三日続けて眠れないときは薬の量を増やすなど対策を講じると良いです。その他の前ぶれのサインとしては、食欲が落ちる、下痢が続く、音に敏感になる、何となく「頭の中が騒がしい」などがあります。
状態がいいときに、「あなたの場合、どういうことが起きたら疲れた証拠かしら」と尋ね確認しておくだけでも、体の調子へ意識を向けることができ、再発の可能性を減らせるのではと思います。
〇ねぎらいやほめ言葉はストレスを減らします。
〇家族自身が暮らしを楽しめることは患者さんにも有益です。
病気や障害との付き合いは長く、であればこそ、お互いの負担をなるべく減らして、それぞれが自分たちの元気を保つ工夫をしてください。暮らしを楽しむ見本を家族の人々に見せてもらえると、患者さんもかなり安心します。病気や障害があってもそれが人生のすべてではありません。私たちの本来もっている、健康な生き生きとした力が、充分生かせる暮らしがおくれるように、何とかみんなで工夫しあってください。
*「統合失調症とつき合う」から参照しました。
薬について
■抗精神薬の主な作用
@幻聴、妄想を和らげるのに優れている。
A興奮状態を和らげ、気分の沈静化をはかるのに優れている。
B意欲の低下・元気の出ない状態から気持ちを引き上げる賦活(ふかつ)効果がある。
▽抗精神薬の種類
定型抗精神病薬
幻覚や妄想を押さえる働きの強いもの
〇プチロフェノン系の薬
ハロペリドール(商品名・セレーネなど)
ブロムペリドール(商品名・インプロメンなど)
混乱・興奮を抑えたり、睡眠を深くする働きの強いもの
〇フェノチアジン系の薬
クロロプロマジン(商品名・コントミン、ウイタミンなど)
レポメプロマジン(商品名・レボトミン、ヒルナミンなど)
プロペリシアジン(商品目・ニューレプチンなど)
比較的賦活活動のあるもの
スルピリド(商品名・ドグマチールなど)
非定型抗精神病薬
幻覚や妄想に効果があり、かつ、手の振るえや舌のもつれ、だるさなどの副作用が少なく、意欲の減退などに対しても効果のあるもの
リスペリドン(商品名・リスパダールなど)
オランザピン(商品名・ジプレキサなど)
塩酸ペロスピロン(商品名・ルーランなど)
フマル酸クエチアピン(商品名・セロクロエルなど)
■急性期の薬の出し方
▽「過覚醒」から引き戻すということが抗精神病薬の主な役割です。これは体や神経が消耗するのを防ぎ、回復力を導くために大切なことです。この引き戻しを一気に確実に行うと、その後の経過によく作用するようで、そのため症状の激しい急性期には、精神科医はたいてい多めに薬を出すようにしています。薬の量が不十分で睡眠が充分にとれず、短期間に症状が治まらないと、回復力も高まりにくい印象があるようです。
▽薬が役に立っているかの目安
この時期は薬を何回にも分けて飲んでもらうのは、なるべく少ない副作用で一日の薬物量を増やすための工夫であり、また薬物の血中濃度を一日を通して高く維持するための工夫でもあります。寝る前に出すのは、睡眠を確保するためですが、抗精神病薬はその鎮静効果のために眠気が多くあり、そのために、どうせなら睡眠がぜひ必要な夜間に多めにだそうと考えています。ですから寝る前の薬は単なる睡眠薬ばかりでなく、強い抗精神薬病薬が入っていることが多いです。
薬が効いた効かないかの分かれ目は、薬を飲み始めて眠れるようになったかで判断します。それは「過覚醒」から引き戻ってきている証拠です。その時の薬の量を基準にして、しばらくは維持するようにします。今まで外に飛び出していったり、大声をあげたりして動きの激しかった人が比較的穏やかに過ごせる時間が増えているとしたら、だいぶ薬が役に立っている証拠です。
音への敏感さが和らいだり、気持ちの焦りが和らいだりは、それから1〜2週間遅れでやってくるのがたいていです。
*興奮の度合いが激しく、規則的に飲むことが困難な場合には筋肉注射をすることもあります。
■薬の副作用
▽副作用について知りましょう。
皆さんに副作用について知っていただきたい二つの理由があります。ひとつは、副作用を知ることで、それを病気の症状の悪化と見誤らないですむからです。もう一つは副作用を知ることで、それについての可能な対策を主治医と相談できるチャンスが増えるからです。
▽眠気が強い、体がだるい
主に鎮静作用を目的とした薬、幻覚や妄想を和らげることを目的とした薬に出やすい作用です。統合失調症の過覚醒状態は、頭がさえすぎて、頭がいつもごちゃごちゃと騒がしく、音やまわりの気配に敏感になる、それが急性期に起きていることです。治療はこのように働きすぎている神経を静めることを目的とします。その結果として患者さんは過覚醒状態から引き戻されるため、眠気やぼうっとした感じが出てくるのです。これが治療効果のひとつの目安でもあります。眠気にまかせてよく寝てもらうことが病気を癒すためにも必要なのです。しかしある程度気持ちが落着いて敏感さが和らいだときは、この眠気が暮らしの妨げになることもあります。集中力が落ちたり根気が続かないことの一因が、薬物の過鎮静による場合もあります。そのような時は、鎮静作用の弱い薬に置き換えたり、眠気の強い薬は就寝前に飲んでもらったりするという工夫がこころみられます。そのようにして「薬を飲んでも別に何も変わらない」と感じられる薬の組み合わせにして、それを維持量の基準にすることができるとコントロールはかなり楽になります。
▽手が震える、舌がもつれる、姿勢が前かがみになる(パーキソニズム)
これも幻覚や妄想を和らげる作用や鎮静作用を主作用とする薬物に多く見られる副作用です。この種の薬は運動をつかさどる神経を通じて、筋肉の伸び縮みにぎこちなさを与えてしまいます。そのため動きづらかったり、体が重く感じられるときがあります。端から見ると姿勢が悪いので、何かとんでもない重病になったのではないかと心配を募らせてしまうことがあるかもしれません。薬と人の相性もありますが、おおむね薬の量が大目のときのほうがこの作用も多いようです。一般的には副作用止めの薬を併用することで、かなり和らげられます。この副作用のことをパーキソニズムと呼ぶので、副作用止めの薬は抗パーキンソン剤と呼ばれます。
▽むずむずする。じっとしていれなくなる(アカシジア)
体の感覚として生じる症状で、たとえば「寝ていても足がむずむずする」「テレビなど一ヶ所でじっと見ていられない」「貧乏ゆすりがひどすぎる」などと話されます。幻覚や妄想を和らげる薬で時々起こるのですが、患者さんの気持ちが焦っているときや不安が強い時など、心理的な不安定さがあるときの方が起きやすいようです。こうした症状は抗パーキンソン剤の投与でおおむね治りますが、不安や焦りに対してもそれを和らげるような心理的や工夫や薬物の投与も考えられます。
▽目が上にあがってしまう。首がひきつれる(急性ジストニア)
目が上に上がってしまうとは、黒目の部分が意思とは無関係に上を向いてしまって、下を見ずらくなることです。首がひきつれるとは、首の筋肉の片側が急に収縮して、首がねじれ、反対側が向きづらくなる現象です。めったなことでは起きませんが、緊張や疲れがたまったときに起きやすい人がいます。薬の種類でいえば、幻覚や妄想を和らげる薬にこの副作用が出やすいものが多いようです。これは一度起きると患者さんはかなり不自由な状態となるので、なるべくはやく医師に相談しましょう。ふつう、副作用止め(抗パーキンソン剤)の筋肉注射で、すみやかに改善するものです。
▽便秘、唾液分泌異常、頻脈、立ちくらみ
薬が脳の目標とする部分だけに効けばよいのですが、薬は体全体を回りますから、いろいろなところでその作用を引き起こします。内臓の動きをつかさどる神経にも影響を与え、それによる症状をだすこともあります。まず便秘ですが、多くの抗精神病薬は腸の働きをゆっくりする方向に働きます。したがって、便が腸の中にとどまりやすい、しかも全体的な体の運動量が落ちていますから、どうしても便秘になりやすい傾向にあります。特に、気分の鎮静化を目的とした薬では、起きやすい症状です。薬の変更、減量に加えて食生活の改善、生活のリズムを整えるなどいくつかの工夫が考えられますが、緩下剤をうまく使うこともひとつのアイデアです。唾液に関しては、一般的には出にくくなります。したがって口が渇くのでが、ガムをかんで唾液の出しやすい状態を作るのは工夫のひとつです。乾きのあまりに飲料を多くとりすぎると、時によっては体調を崩しかねません。水中毒といって体液が薄くなりすぎてしまうことから起きる弊害があります。大量に水分を取る場合は一度主治医に相談してください。また逆によだれが止まらなくなってしまう人もあります。主治医に相談してください。
循環器系に現れる症状で、よくありがちなのは頻脈です。だいたい一分間に90から110程度の脈拍になることが多いです。ふだんの生活に影響を与えることはよほどでないとありませんが、それでも階段を駆け上がったり、急に走ったりは後でつらいようです。また鎮静化を主目的とする薬は血圧を下げる効果があるので、立ちくらみがしやすい人、朝が苦手な人にはその傾向を強めます。
▽生理が止まる、乳汁分泌、性欲の減退
これはホルモン系を通じておきる副作用です。女性にとっては生理が止まることは心配の種になりやすいものです。これは薬の量が増えてくるとしばしばおきる現象です。病気の状態が不安定なときはやむをえないにしても、回復期に入って安定したときは徐々に薬を減量して本来のリズムを取り戻せたらと思います。もっとも生理がないといっても卵巣や子宮の機能が著しく衰えているわけではありません。卵巣や子宮の萎縮などは心配しないでよいと思います。
乳汁分泌は女性だけでなく男性にもおきます。これは出産後に増えるプロラクチンというホルモンが薬の作用によって増加するためです。鎮静作用を主とする薬の一部や賦活効果の高い薬の一部にこの症状が出やすいものがあります。性欲が落ちるということは男女ともおこりうることです。生活上の差し支えが大きい場合は主治医に相談してください。
▽薬が合わないときにでるアレルギー副作用
どんな薬も人によって体に合わないことがあります。「合わない」というのは体が受け付けない、ということで、このような副作用のことをアレルギー性の副作用と呼びます。具体的には、新しい薬を飲み始めて、約2週間以内に体中に湿疹様の皮疹が出たり、体中がかゆくなったり、皮膚が荒れたりします。こういうときはしばしば肝機能も障害を受けていることがあります。このような時は、原因となっている薬をすぐ止めて、他の種類の薬におきかえることが必要です。肝臓の機能については血液検査をして、炎症が起きていないかを確かめます。
▽悪性症候群と遅発性ジスキネジア
めったにおきることはありませんが、知識として知っていればよいと思います。
悪性症候群は、突然、高熱を発して筋肉が硬直し、意識障害をおこし、ときには生命の危険にさらされることもある状態です。熱は40度に達して解熱剤が効きません。
危険な三つの条件
@精神症状のために、たいへん緊張し興奮した状態が、昏迷状態という緊張しながらほとんど動かない状態にある。
Aそのために水分摂取ができず、脱水気味である。
B治療のために向精神薬が、注射を用いて大量に投与されるなどして、かなり急速に高濃度の薬物が体内に投与される。
遅発性ジスキネジアは長期にわたって薬を飲む場合におきることがある副作用で、高齢の人に
見られます。
■薬と消耗期や回復期の考え方
消耗期は病状の激しい時期に消耗したエネルギーを回復するために、神経や体がエネルギーを蓄えようとする時期です。特徴として、過眠傾向、根気や集中力の低下、自発的な行動の困難さなどが必ずといってよいほど生じます。加えて、しっかり急性期の症状に働きかけるよう多めに薬が出たままなので、薬のために眠りすぎ、ボーットし過ぎるくらいになっていることもあります。病気本来の消耗した状態に加えて薬の影響による過度の鎮静から、患者さんは「穏やかにはなったけど、ごろごろばかり」という状態に陥るのです。
▽薬を減らす時期
減らしても大丈夫という確信をもってから減量を始めたほうがいいです。目安は同じ量の薬を飲んでいても、患者さんが以前よりも眠気が強くなったり、だるさがひどかったり、動きが悪くなったと感じ始めたときです。「のんびりできている」「ゆとりがある」というった言葉が聞かれると、より安心して減量ができます。この時期の減量はきわめてゆっくりと行います。(三ヶ月ぐらい)薬を減らし始めたら「しっかり眠れる」「音に対する敏感さが出現しない」「焦りの気持ちがない」など、続いていることを患者さんの話を聞いて確かめつつ、減量をゆっくり続けて行きます。「眠りすぎる」「だるすぎる」という感覚がかすかになるあたりが減量のめどです。また薬を飲む回数を工夫するがこの時期です。消耗期には患者さんが朝寝坊することが多いので、朝薬を出すのはやめて、昼薬、夕薬、眠前薬に一日三回で飲めるように処方することがあります。逆に夕食を食べたら時期に床につくという生活の方は、夕食と眠前薬を一回まとめて飲むことがあります。ケースバイケースで工夫してください。
生活しながら長期にわたって服薬を続けることは大仕事です。ですから原則として飲む回数を次第に減らして、飲みやすい時間に薬を出すようにします。必要な量を確実に飲むことは、患者さんの利益につながります。そのために生活のリズムにあわせた飲み方を工夫するのです。
▽いつ薬がやめられるか
副作用に気をつけながら長期服用が基本。急な中断はマイナス面が多いです。
(私の意見です)また薬に近いものとして、効果的なサプリメント(ビタミンB群)などもありますが、充分な研究とテストが必要です。急な中断はマイナス、これは鉄則です。
▽薬の副作用を良く知り注意しましょう。
*薬に関しては専門家、医師にご相談下さい。 統合失調症HOMEに戻る
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